市販レッドスペシャルコピーモデル 大改造計画
果たしてレッドスペシャルは本当に素晴らしいのか?
果たしてレッドスペシャルは本当に素晴らしいのか???
コアなブライアンのファンからすると、いきなりムッとするようなタイトルで恐縮である。
どの本を見てもレッドスペシャルは「ブライアン・メイ親子が100年前の暖炉の木を使って、多彩なトーンバリエーションを持った素晴らしいギターを自作した」と評価されている。
このギターを知れば知るほど不可解な矛盾だらけである。
私は、先ずレッドスペシャルに関する後付けの評価や美談に対して、疑ってかかることからアプローチしてみた。
果たしてそうであろうか? 私にはそうとは思えないのである。
誤解を恐れずに推測すると、私はレッドスペシャルを、「失敗」と「偶然」の産物だと思っている。その産物にブライアン・メイという人の「英知」と「頑固さ」、そしてクイーンの他のメンバーの個性が作用して、レッドスペシャルの音と評価が出来上がったのではないか? と考える。
以前、ブライアン・メイのレッドスペシャル実物を弾いてみたギタリスト(誰だったか覚えていないが)のインタビュー記事を見た記憶がある。確か「とても弾きにくく、まともに音が出せるシロモノではなかった」というような主旨だったと記憶している。
次頁でその矛盾点を列挙し、その理由を私なりに勝手に推理してみる。
ブライアン・メイのサウンドの特徴
言わずもがな、あの「鼻づまりサウンド」である。
彼は一般的にかなり小さめの音量でプレイしていると思われており、そう書かれているギター書もある。
しかし、事実はそうではない。
メタル系で大出力のマーシャル系を愛用しているギタリストよりは小さいが、極めて小さい音量ということはない。
あの、パワーが無くてやっかいな"Tri-Sonic"のピックアップのシリーズ接続(直列配線)による、こもった「鼻づまりサウンド」のために、トレブルブースターのレンジ以外の音域がこもってしまって、前面に通らないのである。
しかし、結果的にこれがQUEENの4人の音をうまく調和させる役割を果たしている。
「Live Killers」のアルバムを聞くとそれが顕著だ。
「Live Killers」のミキシング処理自体に問題があることも否めないのだが、ブライアンがバッキング時にゴニョゴニョ、モニョモニョやっている音がハッキリと聞き取れない。「Your My Best Friend」となると、モニョモニョ、フニャフニャで、単音なのか、和音なのかもわからず不可解だ。 (市販された「Live Killers」のタブ譜はハッキリ言って滅茶苦茶だったが、仕方がないかもしれない)
しかし、曲として聞くと見事にまとまりを見せており、その「鼻づまりバッキング」から、いきなり中高域で抜け出してくるソロが余計にきれいに聞こえる。
全ての音がクリーンで柔らかいクラプトンや、コードもソロも全てパワフルでハードに歪んでいるハードロック系のギタリスト好きからすると、ブライアンのサウンドは何となくモヤモヤして理解できない人が多いであろう。
何故ブライアン・メイはレッドスペシャルで成功したのか??
もし、凡人ギタリストが偶然にもこのギターを設計し手にしたのであれば、市販のギターと比較して、これから挙げる色々な欠点に気付き、すぐに手放してしまうであろう。しかし、ブライアンはこのギターのみを頑固に使い続け、数年間でこれらの欠点を自分のオリジナルの音となるように克服してしまったのである。
ピックアップ・レイアウトとシリーズ配線の欠点による音質のこもりは自作の「トレブルブースター」と「VOX AC30」の組み合わせで、「ヘンな音」から「独自な音」に改善させた。ショートスケールによるテンションの低さは、ブライアン独自のハンドビブラートやチョーキングを生み出した。あのフニャフニャして音程の定まらないビブラートは、すぐにブライアンとわかるほど特徴的な弾き方である。
まさに「欠点」と「偶然」の産物がブライアン・メイの個性や頑固さと作用して、「特徴」へと変化したのではないかと思うのである。(ブライアンの頑固さは、あの50年近く変わらない髪型と、決してお洒落とは言えない普段のファッションセンスを見ればわかるであろう・・・?)
それでは次頁にてレッドスペシャルの欠点、矛盾点、問題点について考察してみる。